心理カウンセラーの井上です。
人の心は奥深い分、今の自分自身にとって本当に大切なこと、必要なことがはっきりしているときもあれば、そうでないときもあると思います。
自分自身にとって本当に大切なこと、必要なことを自分の中から見つけるときに役に立つのがコラージュ療法です。先日実践心理カウンセリング講座のコラージュ療法を行いました。まず、掲載の許可を頂いた方のご感想を紹介させて頂きます。
コラージュ療法とは
「コラージュ」とはフランス語で「貼り付ける」と言う意味。1980年代くらいから使われている比較的新しい芸術療法です。
気になった雑誌の部分を切り抜き、いくつかの切抜きを1枚の用紙に貼り付けていく心理療法です。心理療法ですが、オリンピック選手なども自分の心を明確にしておくために使うこともあります。
目的としては、「自己理解を深める」「なりたい自分を明確にする」ために行うことが多いです。カウンセリング等でコラージュを実施する際は、コラージュの例や効果、目的、作り方など、簡単な説明をしてから行います。
実施方法
準備物としては、以下のものが必要です。
- 写真入りの雑誌やカタログ
- はさみ、のり、A3用紙
雑誌の数は、50冊もあるとよりどりみどりで良いのですが、2.3冊でも作成する事はできます。可能であれば、参加者の方に切り抜いてよい雑誌を持ってきてもらうと、より満足度の高いコラージュが作りやすいです。
台紙となる用紙に決まりはありませんが、A3用紙くらいの大きさが適切です。なければA4用紙を2枚貼り合わせてもOKです。
やり方としては、まず雑誌から自分自身がセレクトした切り抜きを集め、その後用紙にその切り抜きを好きなように貼り付けていきます。
セミナーで実施する際は、参加者に作成してもらう前にご自身が作成されたコラージュの作品を紹介し、それからどんな気付きが得られたかを簡単にお伝えするのも良いです。
切り抜きはハサミで切っても、手でちぎってもOK、人でも自然物でも文字でも何でもOKです。
コラージュ作成のテーマですが、シンプルに雑誌の中から「気になったもの」で作っても良いですし、「なりたい自分」をテーマに作っても良いです。一般的には「気になったもの」のほうが作りやすいです。
「嫌いなもの」をテーマに作る事もできますが、このテーマで作る場合はカウンセラー同席のもとで実施するのをお勧めします。作るだけで心の体力をかなり使います。
コラージュ療法作品1
今回受講生の方が作られたコラージュを紹介します。
コラージュは作るだけでスッキリ感を得られるのですが、作品を通して会話することでさらに理解が深まります。
解釈・分析方法
どの切抜きが一番気になるのか?なぜその切抜きを選んだのか?という観点でお伺いすると、様々なことが見えてきます。
例えば上のコラージュの左下にリングがあります。このリングを貼られた方にとって大切なのは、リングの下にある「リングの影」とのこと。「影があることで一面だけではなく、全体が見れる」と。
コラージュの上のほうには上空から見た島もあります。「一部分だけではなく全体を見ること」というキーワードを、自分の作ったコラージュの中から見つける・確認していくことが出来ます。
大切なのは切り抜いたコラージュの、その人自身にとってのイメージ
作品を分析する時にユング心理学の考え方も参考になりますが、最も大切なのはその人自身が感じるコラージュ・切り抜きのイメージです。
左上の水族館や、この方にとっての海のイメージ、橋のイメージ、靴や寝袋のイメージをお伺いしましたが、共通しているのは、
「新しい行動を起こしたい」
ということが現れていること。
心を休める、癒すときが大切な時期もありますが、その方にとって今はそれが大切なのではなく、動く・新しい行動を起こす事が大切な時もあります。
誰かにそれを教えたり与えてもらうのではなく、コラージュ療法では自分自身が作ったコラージュからそれを見つけていく、確認していくことが出来るのがおもしろいところです。
他の受講生の方が作られたコラージュを紹介します。
コラージュ療法作品2
この方は、ご自身の希望でまず「自分が嫌だと感じるイメージのコラージュ」を作られ、その後にそれが癒されるコラージュを作って頂きました。上の作品は癒されるイメージのコラージュです。
このコラージュについても、なぜこの切抜きを選ばれたのか?この切抜きのどんなところが気になったのかをお伺いすると、その方が大切にしたいことが見えてきます。
私自身今まで300以上のコラージュ療法の作品を見てきましたが、実はこういった非常にシンプルなコラージュを作られる方は多くありません。
この方にとって、真ん中の切り抜きも大切ですが、その周りの余白の意味もとても大切なものだと感じます。
コラージュ療法は、作成するだけで「自分自身の心の深い部分」や、「大切にしたい事、今必要と感じている事」を見つけられます。よかったらこのブログをご覧の皆さんも作成してみて下さい。
他の芸術療法と比較してのコラージュ療法のメリットや、解釈例については次の記事をご参照下さい。
うつ病を克服するまでのコラージュ療法33枚