絵画療法

アートセラピーの効果4つを事例を交えて解説

様々なアートセラピーの事例

アートセラピーは芸術を心理療法に応用したものです。

絵画療法、コラージュ療法(雑誌の切り抜きを使用)、造形療法(粘土を使用)など様々な種類がありますが、基本的は効果は共通で次の4つです。

この記事では上記の効果をそれぞれ解説します。

1 自己理解が深まる

人には言葉にしにくい思いや感情がありますが、言葉には出来なくても絵や色などのイメージとして表現できます

心の形をイメージして自由に描いた絵や、何気なく描いた木の絵(バウムテスト)などを心理学的な観点から見たり、そこから会話を深めていくと無意識で感じている事が浮き上がってきます。事例を交えて解説します。

事例

↓の絵は、当スクールの心理セミナーの中で、40代男性の方に描いて頂いた絵です。

「心の形を自由に絵にしてみて下さい」と私がお伝えし、クレヨンでA4用紙に描いて頂きました。※ご本人に掲載の承諾を得ております。

アートセラピーの解釈では、パッと見た印象が非常に大切ですが、ハートにしては少し左右に特徴があります。ここからハート(愛情)に対して何らかの違和感があるという仮説を立てられますが、絵を通して会話を深めていくと、より明確に見えてきます。

V字型の赤とピンクの強い筆圧で描かれた絵

Aさんのアート

Aさんは、「なんでこういった絵を描いたかわからないですね」とおっしゃっておられましたが、絵の中の気になるところをお伺いすると、赤の中に混じっているピンクの部分

「ピンクはどんなイメージですか?」と聴くと、「もうすぐ2歳になられる女の子のお子さん」のイメージ。さらに赤のイメージを聴くと、「家族の女性」のイメージ。Aさんはその絵を見ていると少ししんどい感じがするとおっしゃられました。

そこからさらにお話を深めてお伺いすると、特に奥様との関わりで気になっておられる事をシェアして頂きました。

パートナーとの関わり方というキーワードが、絵を通して会話する中で浮き上がってきています。

Aさんのご感想です。

Aさんのご感想

その他の自己理解が深まる事例は↓をご参照下さい。

自己理解が深まるだけでなく、自由に自己表現でき、スッキリ感が得られるのもアートセラピーの特徴です。

2 自由に自己表現できる

Bさんのアートセラピーの事例

Bさんのアート

同じく心理セミナーの中で描いて頂いたBさん(50代女性)の絵です。

絵を描いただけでBさんから、「なんだかスッキリしますね」という言葉。

というのも絵を自由に描くだけで、自己表現になるためです。

普段生活していると、言いたいことを抑えないと場が回らなかったり、周りに合わせざるを得ないような時もあります。仕事であれば自分がやりたい事よりも、相手(顧客)のニーズを重視する必要があります。

自分が思ったことを思ったように、感じたことを自由に表現出来る機会は、実はそう多くありません。

自己表現の機会が少ないと当然うっぷんも溜まってきます。また、自分よりも他人を優先するクセがある方は、自分は本当はどう思っているのか、どう感じているのかが見えなくなる事もあります。常に自分を抑え込む状態になると、何かがおかしいという違和感がでてきます。

↓の事例は、カウンセリングの中で無意識に自分よりも他人を優先するクセがあった事が明確になり、その後に描いて頂いた絵です。「心の形を自由に描いて下さい」と伝えて描いて頂いてます)

アートセラピーの事例、山間の湖にヨット

描かれたのは40代の主婦方ですが、絵を通して会話しているうちに、

「こんな時計のない場所で本を読んでいたい。」

と絵には無い「時計」のことを話されました。

これまでは子供の生活を基準に「時計」を見て生活してきており、自分の好きなこと、やりたいことは無意識に抑え込んでいた状態でした。

アートセラピーを通して自己表現することで、自分が今求めている事、必要としている事も同時に発見できる場合があります。

3 カタルシス効果(感情の浄化作用)が得られる

自己表現出来ると、それだけで気持ちがスッキリするカタルシス効果(感情の浄化作用)があります。

外側が黄色のハートの絵を描かれたBさんは、アートを通して次のようににおっしゃられていました。

ハートの中の特に水色の部分が大事。水色は冷静さのイメージ。今までの仕事で冷静でない時があった。そんな時に落ち着いて状況を見ることで、もっと良い結果を作っていくことが出来ると思う。

さらに冷静でなかったときの事を詳しくお伺いすると、仕事だけではなく、プライベートでストレスが非常に強かった時のことをお話して下さいました。いきなり辛いことは話しづらいものですが、絵を通して適切に会話していくと言いにくいことも話しやすくなり、その結果その気持ちが浄化されるというメリットがあります。

絵を通して会話しなくとも、描くだけでカタルシス効果があります。というのも、描くことですでに言葉にしにくかった感情が出せているためです。

↓は私自身が以前描いた絵です。

バウムテストの枯れ木の写真

この絵を描いた時は、本当に自分がカウンセラーになれるんだろうか?という不安感や、真剣にトレーニングに取り組み、出来ないことと向き合う怖さも感じている時でした。

絵にはその感情も現れていると感じます。不安や怖さは抱えざるを得ない時もありますが、その気持ちを溜め込むのではなく、絵を通して出すことで浄化される(楽になる)ケースも多いです。

4 心の変化が目に見える

心の動きは自分ではわかりにくいですが、心の形を絵にして描いてみると、変化がわかりやすいです。目に見える形で現れます。

↓は私が以前カウンセリングの前と後で描いた絵です。

カウンセリング前に描いたアート

カウンセリング前に描いた心の形

幹の色に赤と紫が混ざっていたり、葉の外側が緑が濃く、内側が緑が薄い(自分の思いを外に出したくない)ところが印象的です。

1時間のカウンセリングを受けた後に描いた絵が↓です。

カウンセリング後に描いたアート

カウンセリング後に描いた心の形

この2枚の絵を見比べるだけで、どのような心の変化があったのかが一目瞭然です。

実があるのは何らかの達成感が得られている証ですし、幹も非常に力強い色になっています。

葉の色も先に描いた絵とは逆で、内側の色が濃く、外側が新緑の色で自然な色合いになっています。

日をおいて心の形を絵にしてみたり、カウンセリングの前後で絵を描いてみると、どのような心の変化があったのか客観的に判断することができます

まとめ

アートセラピーの主な効果として、

  1. 自己理解が深まる
  2. 自由に自己表現できる
  3. カタルシス効果(感情の浄化作用)が得られる
  4. 心の変化が目に見える

があります。興味のある方は、是非一度体験してみて下さい。

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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

ジョイカウンセリングスクール代表。福岡にて心理学・コミュニケーションセミナー、心理カウンセリングを実施。2004年よりプロとして活動してます。プロフィール

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