
アートセラピーとは、様々な芸術を使った心理療法です。絵や素材を使い、五感に働きかける芸術を通して、自由に自己表現することを重視しています。
芸術をセラピーに応用することで、
- 言葉では表現できない思いや感情、違和感などが可視化(表現)され、心の深い部分が明確になる
- 感情がクリアになり、癒やしを得られる、自己肯定感が高まる
効果が期待できます。
「芸術は爆発だ」という岡本太郎氏(芸術家)の言葉がありますが、芸術は感情の爆発でもあります。そこに現れているメッセージを読み取っていきます。
この記事では、はじめての方にもわかりやすくアートセラピーについて解説します。
1 アートセラピーとは何か
芸術療法との違い
芸術療法は、芸術を応用した心理療法の総称として使われる呼び方です。主に以下の心理療法、セラピーが含まれます。
芸術療法(アートセラピー)に含まれるもの
- 絵画療法(クレヨン、鉛筆などを使用)
- コラージュ療法(雑誌の切り抜きと白紙を使用)
- 箱庭療法(フィギュアと砂箱を使用)
- 造形療法(粘土を使用)
- 音楽療法(音楽をセラピーに応用)
- ダンスセラピー(ダンスをセラピーに応用)
- 演劇療法(演劇をセラピーに応用)
芸術療法全体のことを指してアートセラピーと呼ばれます。
注意点として、絵画療法単体のことを指して「アートセラピー」とも呼ばれます。
つまり アートセラピー=様々な芸術療法の事 であり、絵画療法=アートセラピー でもあります。
2 アートセラピーの心理的効果
アートセラピーの最も大きな効果・特徴は次の通りです。
- 無意識の心のキーワードが現れる
- 心を目に見える形として表現できる
- 自由な自己表現により、カタルシス効果(感情の浄化作用)が期待できる
無意識の心のキーワードが現れる
自分自身が思っていること、感じていること、本音で望んでいること等、言葉に出来るものもあれば、そうでないものもあります。
何気なく描いたアートや作った作品を心理学的な観点から紐解いていくと、言葉にはしきれない心の深い部分が見えてくるケースは多いです。
特にあまりに辛い体験があると、人は無意識に感覚を止めてその時を何とかやり過ごしますが、感覚を止めたまま長い期間過ごすと様々な心理的・身体的な弊害が起きやすくなります。そのトラウマケアにも使われます。
心を目に見える形として表現できる
心の変化は目に見えないため非常にわかりにくいですが、アートセラピーを使うと可視化されます。続けて絵を描いたり作品を作ることで、その間にどのような心の変化があったのかが客観的にわかります。
また、普段過ごしていると思ったこと、感じたことをそのまま表現していたら仕事や家庭生活がうまく回らないことも多くあります。
人は、自由に自己表現できる場があると、それだけで安心できます。
どんな人に向いているか
特に以下の方に向いています。
- 心の深い部分で感じていること・思っていることに関心のある方
- 芸術を通した自己表現が好きな方
- 自分よりも無意識に他人を優先する傾向がある方
(自分がどう思っているか、どう感じているか、わからなくなる傾向有り) - 自分の意見をストレートに言うのが得意でない方
(感情を抑え込みやすい) - 感情を言葉で表現するのがあまり得意ではない方
子供向き?
絵画療法、箱庭療法が子供を対象として使われるケースが多いのは、子供は感情を言語化する(~が苦しい、~に戸惑っている等の言葉にする)のにまだ慣れていない点も大きいです。
子供だけでなく、大人に対しても効果は得られます。老人施設ではボランティアで音楽療法が行われることもあります。私自身過去特別養護老人施設に勤めていたことがありますが、若い時に聞いていた歌をセラピスト、施設の人と一緒に歌ったり打楽器で演奏するだけで涙される方も多くおられました。
アートセラピーの主な種類について解説します。
3 アートセラピーの主な種類
アートセラピーは「言葉にしにくい感情や違和感」を、絵や素材・空間・形として表現しながら、自己理解と自己肯定感の回復をサポートする心理療法です。以下は代表的な4つの手法です。
- 絵画療法
- コラージュ療法
- 箱庭療法
- 造形療法
絵画療法

マイナスの感情をテーマに描いた絵画療法の作品例(左下にグレーの家有り)
何らかの絵を描く心理療法で、アートセラピーと聞くと絵画療法をイメージされる方が最も多いです。
特定のものを指定して描くテーマを決めて行うタイプと、自由に描くタイプ(自由画)に分かれます。
絵画療法で最もメジャーなのは、木の絵を描くバウムテストです。就職の際の面談や、心療内科などの病院の診察の際にも広く使われています。
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コラージュ療法

うつ症状のある方が、ケアの過程で制作したコラージュ療法の一例
コラージュ療法は、気になった雑誌の切り抜きを集め、それを1枚の用紙に好きなように貼り付ける心理療法です。
コラージュ療法の最も大きな特徴は、アートセラピーの中でも取り組みやすさNo1の点です。取り組む際の抵抗感が最も低いです。
絵を描くのは上手い下手の評価が気になる方もおられますが、コラージュは切り抜きと貼り付けで出来るため見栄えの良いものが作れ、作るだけで自己肯定感を得られやすいです。もちろん他のアートセラピーと比較してのデメリットもあります。(作成時間が最も長い)
箱庭療法

トレーニング受講生がオンライン実習中に制作した箱庭療法の作品例
箱庭療法はフィギュアと砂箱を使って1つの世界を作る心理療法です。学校や病院などに設置されていることも多く、特に日本人に向いています。
これは箱庭が、投影(ある物に自分自身の何かを映し出すこと)を通して行う心理療法である点が大きいです。日本人は元来察する文化で、アメリカのようにストレートに自己表現する環境ではなく、情感を大切にする民族性(俳句や短歌など)です。また、日本庭園や盆栽など一定の空間で表現することを昔から行っています。
造形療法

マイナスの感情を立体、感覚的に表現した造形療法の作品例
造形療法は粘土を使った心理療法で、特徴はアートセラピーの中でも心がダイレクトに現れる点です。粘土を使って表現された作品は、その方の心そのものといえます。
ストレスを表現してストレスケアに使用したり、未来をイメージして将来望むイメージを明確化するために使うこともできます。
4 アートセラピーはどんな悩みに使われる?
アートセラピーは、以下のような「言葉にしづらい悩み」に対して特に使われています。
- 過去のトラウマがひっかかっているが、言葉にはしにくい場合
- 言葉で自分の思いを話すのが得意でない場合
- 「何かがおかしい」感覚はあるが、言葉にできない場合
- 子どもの情緒面のサポート
- なりたい自分の明確化(コラージュ療法・箱庭療法が有効)
5 アートセラピーは怪しい?誤解されやすい理由
アートセラピーが怪しいと感じられる理由として、言葉を使って論理的に進められるイメージではなく、アートを通して行われるため、
- 信憑性に欠けるのではないか?
- 絵を描くことでなぜ心の問題が解決するのか?
というイメージが先立つ点が大きいと感じます。
科学的・心理学的立ち位置
アートセラピーは世界中で使用されており、心理学として確立されています。(各療法によって歴史の長さの違いはあります)
1942年にイギリスの画家であるエイドリアン・ヒルが創作により自らの身体疾患を回復させた体験から「芸術療法」という言葉が用いられはじめました。
引用:今井真里 アートセラピー入門 P12(参照2026-01-06)
心理学的な観点から、効果は実証されています。
スピリチュアルとの違い
ほぼ別物です。
- アートセラピー
- 心理カウンセリングの技法の1つ
- スピリチュアル
- オーラや前世、守護霊のメッセージを重視
アートセラピーは心理学・心理療法をベースとして、その人自身の心の深い部分を知る、分析するのが特徴です。
スピリチュアルは心理学よりオーラや前世、守護霊のメッセージなどを大切にしています。
また、アートセラピーが怪しいと感じられる理由として、高額な受講料を支払うケース、アートセラピーで逆に傷ついた場合も含まれます。
6 アートセラピーは自分でできる?
アートセラピーを自分で行うことは可能です。ただし、初めての方はカウンセラーと共に実施した方が良いです。というのも、アートセラピーは心の自己表現でもあります。それを1人で行うのと、信頼できる人に見守ってもらいながら行うのとでは、どうしても表現に差が生まれます。
※ 経験がある方が、自己理解を深める意味合いで行っても基本的に問題有りません。うつ病を克服するまでのコラージュ療法33枚で紹介している方は、職業訓練の場で複数人で行った時もあれば、1人で行った時もあります。
注意点
次の場合は1人で行うのではなく、心理カウンセラーの元でやるべきです。
- 過去のトラウマ・心の傷を見つめる目的で行う場合
- 現在落ち込みやストレスが強く、その根本要因が幼少期にあると感じられる
- 嫌いなものやストレスをテーマとして描く場合
理由として、アートセラピーは言葉だけの場合よりもマイナスの感情を出しやすい(表現しやすい)性質があるためです。辛い体験であればあるほど、それを出したときに誰かに受け止めてもらえないと、感情の行き場が無くなって心がむき出しになり、不安定になる可能性があります。
詳細アートセラピーを自分でやる方法と1人でやらない方が良いケース
7 アートセラピーを受けたい人へ
アートセラピーは対面はもちろん、オンラインで受けることも可能です。
対面で受けたい場合は、地域で実施しているカウンセラーを探すという選択肢もあります。マンツーマンだけでなく、グループカウンセリングとして複数人で行う場合もあります。
| メリット | デメリット | |
| グループセッション | 料金安め。参加しやすい。他人の絵が見れたり悩みが聞ける。 | 1人1人の会話量はマンツーマンより少なくなる。実施されていない場合有り。 |
| マンツーマンセッション | 深い話がしやすい。 | 料金高め。参加のハードルは高め。 |
なお、各種セラピーのやり方は、カウンセラーによって幅(違い)があります。作品を作成して終わりの場合もあれば、何らかの分析のみ伝えるケース、作品に質問しさらに深めるケースもあります。
私自身は作品に質問し、さらに深めるやり方で実施してます。
詳細アートセラピーオンラインセッション
8 アートセラピーの学び方・資格・講座
アートセラピーは独学で学ぶことも可能ですが、
- 具体的にどう読み取ればよいか
- アートを通してどのように関わればよいか
という点で独学には限界があります。すでに先人が心理学・心理療法として体系立ててくれていますので、それを学ぶ方が効率的です。
アートセラピーを短期間で効率的に身につけて頂けるよう、私自身通信講座を実施してます。こちらではアートセラピーを使ってカウンセリングを行っている動画講義も収録しており、どう分析すればよいか、どう関わればよいかが明確に掴める内容にしてます。是非ご覧ください。
詳細実践心理アートセラピー通信講座
資格と講座について
アートセラピーの資格で国家資格はありません。すべて民間資格です。
通信講座、通学講座、オンライン講座のいずれかで学習し、資格取得できますが、数はそれほど多くありません。
アートセラピーの学習、資格取得に興味のある方は、是非私自身が実施している上記の通信講座で学んで頂きたいというのが本音ですが、他の資格取得講座も気になるものだと思います。↓の記事で比較検討してみてください。
関連アートセラピー資格講座6つを比較、通信通学の費用と難易度まとめ
アートセラピーには向き・不向き有り
アートセラピーは芸術をカウンセリングに応用している性質上、向いている人(楽しみながらできる人)と、そうでない人に分かれます。大切な点として実施の際は
- 上手い下手は関係ない(評価しない)事を伝える
- 自由な自己表現のため、良い悪いは無い観点で関わる
ことです。上記を伝えた上で絵を描いたり箱庭の制作を拒否されるようであれば、無理に行う必要はありません。
特に辛い体験であればあるほど、それを振り返る、その時の感情を思い起こすためには、一定の心の体力が必要となります。実施の際は、是非相手の方を尊重しながら関わっていってください。
アートセラピーは、アートを通した自己表現で感情をクリアにしたり、アートを通して自分を好きになる(自己肯定感を高める)ために行うものです。